No.04 パスの概念を覚える
04 パスを使いこなすには(パスを描く応用)
 
 1:アンカーポイントを減らす
 さて、パスでラインを描く利点そのものはここまで嫌というほど説明してきました。 フリーハンドでは描けない美しいラインを描くにはパスしかありませんが、そのラインの美しさを最大限に引き出すには、出来る限りアンカーポイントを設置しないということが重要になります。 無論最低限必要な形状を作るためには必要な数はありますが、それ以上のアンカーポイントの設置は意味がないどころか、ラインを描画する際のマイナスポイントになりかねません。 これは、アンカーポイントと方向ベクトルを打つのはフリーハンドであり、どうしても曖昧さを拭い去ることが出来ないからです。 先ずは図1をご覧ください。


図1:フリーハンドラインの例

 フリーハンドで描かれたライン(下書きなどを含む)をパスで再現する場合、どこまでそのフリーハンドのラインを信頼するかによって、パスのポイント数は変わってきますが、それはフリーハンドのラインを描いた当人にしか決められない部分でもあります。 細かな窪みひとつでも、それが手によるブレとして省略するのか、パーツのひとつとして再現する必要があるのかということは、その絵を設計した物しかわからないというのは、当然といえば当然でしょう。 ただまぁ、趣味などにおいて普通に絵を描いていくにあたっては、下絵を書いたのと同一人物が清書しますから、あまり深く考えることは無いのかもしれません。
さて、図1の画像ですが、これはPhotoshopで適当なキャンパスを作成して、そこに単純に描いたものです。図2に、この絵の中で再現したい部分を示します。


図2:再現したい信頼度

 では、これをもとにポイントしてみます。



図3:アンカーポイントの例 1

 図3は、各ラインの角度ごとにポイントをした例で、点A〜Gまでの7ポイントで構成しています。 このポイントの仕方はあえて個数を増やしているので若干無理がありますが(笑)、少なくとも点Bは、A点とC点の中間点ですから省略できますね。 また、D点はC点とE点の入射角を指定すれば代用できるのでこれも削除できます。
 この中で削除できない点は Fです。厳密に言えばE点とG点の入射角を調整すればある程度は可能ですが、パスでは計算で指定できない角度の変化は流動的なラインであっても再現できませんから、F点を置いたほうがより正確なラインを描画できるようになります。


図4:アンカーポイントの例 2

 という考えの元、私の思う最適なパスのポイント地点は図4になります。 特にC点とD点では、入射角と方向ベクトルのラインを調整することによって、アンカーポイントを減らすことが出来ます。


図5:パスによる描画例

 左は7点のアンカーポイント、右は5点のアンカーポイントによって作成したパスを元にして描いたラインになります。 さて、このラインの完成形だけをみて、どちらが良いかというのを一義的に図ることは出来ません。 私に言わせれば完成形としてはどちらでも良いと思いますが。 ただ、右のラインのほうが綺麗に描けているとは思います。 これは単純にアンカーポイントが少ない分だけ、計算で描かれている割合が多いからですが、少ないアンカーポイントでラインを綺麗に描けるならこれに越したことはありません。



 2:S字を描くコツ


 
図6:実作業でのライン
このパスは実際に使用したものではなく、説明用にトレスしなおししています

 S字は、2個のアンカーポイントによって描くことが出来ます。 これは、水平に置かれた2つのアンカーポイントを移動させてみることによって理解できると思います。 図7をご覧ください。



図7:パスによる描画例

 言ってしまえばこれだけのことです ただ、2つの曲線を結ぶ交点が水平になるようなS字は描くことは出来ません。 これは、ひとつのアンカーポイントから出される位置ベクトル情報だけでは完全な半円を描くことが出来ないからです。


図8:3点アンカーポイントを用いたS字の例





 3:正確なポイントを打つには
 パスは、画素としてではなく、位置情報として純粋なポイント位置を持っています。 ですから100%サイズで作成した時には正確だと思われた点も、拡大(ズームツールを使います)を行うと、微妙なずれがあることも結構ある話です。


図9:ポイントの微妙なずれ

 パスの誤差範囲が1ピクセル以内であればさしたる問題でもありませんが、ブラシツールなど、ラインに不透明度の情報(アンチエリアス等)が含まれている場合はけっこう問題になることもあります。 パスツールは、Photoshopの16倍ズーム時に1ピクセル単位で点を指定できる精度があるので、複合パスで綺麗なラインを取ろうと思った場合、頭の片隅にでも置いておくと良いかもしれません。



 4:アンカーポイントは減らすより増やすべき
 アンカーポイントは、後に追加削除を自由に行えますが、この2つの作業のうち、パスラインに影響を与えやすいのは後者「アンカーポイントを減らす」ほうです。 A点、B点、C点を結ぶアンカーポイントを作成した場合、無理にアンカーを削除すると図10のようになります。


図10:アンカーポイント削除の例

 アンカーポイントを極力減らすことによって、綺麗なラインを描くことが出来るのは確かですが、一旦アンカーポイントを作成し、それが実質的にラインに悪影響を与えていないようであれば、むやみにアンカーポイントを削除する必要は無いでしょう。
 Photoshopのパス機能には、削除されたアンカーポイントを補完するような機能があるのですが、図10のように特にA点C点だけでは描画することの出来ないライン(角度が二次的に変化している)の場合、削除してしまうとこれほど異常な変化をしてしまい、削除後のA1点は、画像のはるかかなたにまで飛んでいってしまうこともあります。
 アンカーポイントを追加するのも、確かにその両サイドにあるパスのラインに影響は与えますが、追加によるパスの変化は削除による変化に比べると僅かなことです。 パスは基礎的な形状を形作ってから詳細に変更していというのがコツです。 ですから、概要をまとめてからパスを追加するという行為は、アンカーポイントを無条件に減らしていくよりも効果的に描画できます。



 5:方向ベクトルとパスラインを交差させない(原則として)
 あくまで原則として、ですから、それが違法作業ということではありません。 図11のような場合、交差させたラインを用いることによってポイントを減らすことも可能です。


図11:拡大後再描画は可能

 が、上記のような場合であっても、私はB図ではなく、A図を推奨します。 B図では、二次曲線を複合させて表示させているため、ひとつのアンカーポイントが持つ役割が大きく、修正で影響を与えるパスラインが多いこと、パスラインと方向ベクトルを交差させると、A点とB点との交点が鋭角になり、操作が難しくなることが上げられます。 当然B図で完璧に描けるようになればそれに越したことはありませんが、フリーハンドのラインを直感的にパスに変換していくにはリズミカルに速く採ることも重要です。パスを直感的に描くのに、ひとつのアンカーポイントが沢山の情報を持つ事は余り好ましいことではありません。



 6:アンカーポイントは画像外にもポイント可能
 アンカーポイントの位置は画素ではなく純粋な位置情報で記録しているということは「3」で示したとおりです。 位置ですから、画像の外側にアンカーポイントを指定することも可能ですし、位置ベクトル情報を画面外に配置することも可能です。


図12:画面外のアンカーポイントの例

 当然、画像の範囲外ではパスを描画することはできませんが、画像を拡大することによってこれらの画像を再描画することは可能ですし、当然拡大しない状態でPSDとして保存しても、その情報は保持されています。


図13:拡大後再描画は可能

 ちなみに、画面外のアンカーポイントを操作するには当然画面外を表示しなくてはなりません。 イラスト描画となると、画面の表示機能よりも画像のピクセル数のほうが多いのが通常ですので、拡大ツール()のオプションパレットで操作できる「フル画像表示」「ピクセル等倍」では表示できません。 画面外のパスポイントを表示するには、ナビゲータパレットで拡大率を変更させる必要があります。



 7:パスを素早くポイントしていくには
 「4」でも触れましたが、パスは外郭を大まかに決めてから微調整をしていくほうが効率よく作業できることが多いことは確かです。 今回のこの章で用いた画像は何も無い状態からのパス作成でしたが、通常は下書きで描いたラインをトレースしていくという形になります。 下書きのラインは不正確ですから、パスでライントレースをする際にそれを頭で補完していかなくてはなりません。 そしてそのトレースには直感的に素早く行うべき・・・というのが私の持論です。 下書きが正確なイラストに関してはコレに限ったことではないかもしれませんが、トレースを素早く行えるのならそれに越したことは無いと思いますし。


図14:統合的な描画例

 このキャラクタはパーツをシャフトで連結した状態のメカデザインをしています。 それぞれのパーツは統合的なデザインを取っていますので、パスのラインを取る際には、これら接合部で途切れる部分は考えず、一本のパスで描いたほうが結果として綺麗なラインを描けます。


図15:アンカーポイント地点

 必ずしも最小単位のアンカーポイントではないということはお分かりになると思います。私の技術不足もありますが、基本的のこれは、おおまかなパスの外輪を作成した後、詳細の修繕、アンカーポイントの追加を行ったからで、私としては妥当なポイント数を取っていると考えています。 この辺りは、実際のCG講座でも説明します。



 さて、「No.04」の章では、パスのラインを取る上での基礎と発展を書いて見ました。 殆どマニュアルに書いてあったりすることなんですが、次の章からパスを用いたラインで実際の描画をする時の説明用の意味も兼ねていますので、ご容赦のほどを。


キャプチャした画像は Adobe Photoshop4.01 のものです

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