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さて、2Dの絵において、奥行きを表現すると言うことは決して簡単なことではありません。 紙面が2Dなのだからしょうがないのですが、しかしそれでは芸が無いので、技術があるものもそうでないものも、己の作品の奥行き表現を如何に見るものに与えるかと言うところを考えていくわけです。
銀塩写真で映像として風景を捉えたとき、当然2Dの紙面上に投影されているわけですから、奥行きは存在しません。 ということは、こういった写真撮影等によって得られるいわゆる投射技術というのを再現できれば、2Dイラストにも美しい奥行き感を出すことが出来るはずです。 技術のある方は、こういった奥行きの表現方法を完全に身につけているわけで、美しい作品に仕上がるのは当然なのですが、問題は私のような技術的に未熟なものが絵を書くとどうなるかと言うところにあります。
ここでは、3点パースだのといった専門的なものは一切排除して、視覚的に「見える」ような気がする(笑) 奥行きの出し方を考察していきたいと思います。
1:グリッドラインを用いる
グリッドラインと言うのは、縦横等の一定間隔に附箋されたラインのことをここでは指しています。 厳密には違う部分もありますが、意味合い的にはそう考えてもらって差し支えないでしょう。
このグリッドラインを、床や壁の奥行きに合わせて、模様として組み込んでおきます。
模様として組み込んでおくことで、見るものに対して奥行き感を意識無意識に係わらず自然と取り込ませることが出来ると言うことのほかにも、描く時においての重要な基底ラインとして用いることが出来、結果としてずれた絵を描いてしまうことに対して防止する役割も持っています。
そのままグリッドのラインを用いてしまうと芸が無いので、そこは床の模様のようにしてごまかしてしまう事によってそれほど違和感が出ることはありません。
今回の絵では当初入れる予定ではありませんでしたが、壁としての奥行きを与えたい場合、緑のラインのように角度をユーザーに見せることによって、より奥行きと壁の立体感を強調することが可能になります。
仮に、グリッドラインの無い状態のイラストであった場合はどうなるでしょう。 下図をご覧ください。
床の上に立っている事は分かると思いますが、今ひとつ奥行き感がぱっとしませんよね。 結局、こういった装飾の一つ一つが、奥行きを出すための重要なアイテムとなっているわけです。
2:影をしっかりとつける
さて、絵を描く上で以外に軽視されるのが影のつけ方であると思います。 まずは下図をご覧ください。
この絵は、床のグリッドラインと、キャラクターの影を排除した状態を示しています。 紙面上で浮いているような感覚になるのがお分かりになるでしょう。 実際、まるっきり影を描画しないと言うことは無いと思いますが、簡単にブラシでちょこちょこっとすませてしまうと言うことは意外と多いのではないでしょうか。 キャラクター単体でしっかりと奥行きを感じ取れる作品となっていればそれでも何とかなるのですが、しっかりとキャラクターの影を取らないと、折角の作品の完成度を著しく下げることになりかねません。 基本的にキャラクターさえ仕上がっていれば、影をつけることは技術的に難しい問題ではないので、こういったところではしっかりと書き込んでおきたいものです。
3:グリッドラインに出来る限り忠実にキャラクターを配置する
床のグリッドライン上にキャラクターを配置する際、キャラクターはラインに水平か垂直であると、非常に奥行きが取りやすくなります。
赤のラインはキャラクターの間接と床の横線のグリッドラインを、緑のラインは足の位置と縦線のグリッドラインとの相関関係を示したものです。 完璧とはいえませんが、ほぼグリッドのラインと照らし合わせて水平を保っています。こうすることで、描く際に奥行きに関する計算を頭の中でする手間が省けますし、より自然に見せることが可能になります。 無論この方法は、紙面が単調になりやすいと言う欠点もありますので必ずしも良いとは言い切れませんが、馴れない奥行き表現に失敗して作品を台無しにするよりかはよっぽど正しい選択でしょう。
4:直接光の入射位置を一本に絞る
一枚の絵として作品を仕上げる時、必ず関係してくるのが光による入射です。 直接光と間接光とがありますが、これらを一切排除して描くと言うことは、ただ単に黒を塗りたくっているのだけで絵ではありませんので、当然と言えば当然のことです。
無論、デフォルメは必要で、厳密に光の入射や反射位置などを語るつもりはありませんが、バラバラに影をつけていくことは、絵全体のバランスを損なうことになり、結果として作品の完成度を落としてしまいます。
さて、我々の目に見える範囲内には森羅万象すべて光による反射と影によって成り立っています。 当然光の入射方向も無数に存在しているでしょう。 がしかし、馴れないうちに複雑な光の演出を行おうとすると、かなり緻密に計算しない限り、不自然なものになってしまうことが良くあります。 例えば単一の方向から光が入ってきている場合は、当然キャラクターから伸びる影は1つになりますが、複数の光源が存在すれば、厳密にはその数だけ影が発生することになります。 一つだけの影であれば若干形状がおかしくても気になりませんが、複数の入射による表現に切り替えたとき、いいかげんに描くと一気にその粗が目立ってしまうことが実は良くあるんです。 これは、我々が無意識のうちに影の位置から物体の立体感を見出しているからであろうと言われています。 単一の方向からの光による表現が簡単で誤魔化しやすいのはここにあり、単一の光による演出であれば、陰影の着け方も楽ですし、若干のずれや間違いが気にならないという利点があります。
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